🌊 AQUARIA SERIES 🌊
〜 A-10 〜

『潮音の灯台と結晶の航路』

🌊 第一章:渦潮の門
北海の境界線に、巨大な渦潮が口を開けていた。
海流のぶつかる音が、水中でも低い太鼓のように響く。
💬 「ここを越えないと、東の海盆には行けないのね」
マリンは操縦席で深呼吸をした。
渦潮の周縁には、封鎖された航路の標識が沈んでいる。
🐬 『海流の乱流指数、危険域。旧航路灯台が停止しているため、誘導光なし』
🐬 ドルフィンの冷静な声が、さらに緊張を増した。
💬 「じゃあ、灯台を点けるしかない」
その言葉に、ドルが小さく反応音を鳴らす。
古い記録では、渦潮の中心には「結晶灯台」があり、潮の周期に合わせて光ることで航路を描いていたらしい。
🌊 第二章:結晶の耳
灯台は海底の丘の上にあった。
巨大な貝殻を思わせる白い外殻と、その中心にそびえる透明な塔。
塔の内部は、びっしりと結晶の柱が並び、微かな光を抱いていた。
💬 「生体電位は……ほとんどゼロ。眠ってる」
💬 「起こせるかな?」
マリンは「青い封筒」を取り出し、結晶柱の根元にそっと触れさせた。
すると、封筒から淡い燐光が流れ出し、結晶へと染み込んでいく。
塔全体が、遠い音を思い出すように震え始めた。
🐬 『反応確認。結晶は音波に共鳴する構造。潮音の周波数に合わせて出力すれば起動する』
💬 「つまり、渦潮の音を聴かせるってことね」
マリンは外部マイクを灯台の回路に接続した。
渦潮の轟きが、結晶柱を通して塔の奥に送り込まれる。
結晶は、音に合わせて色を変えた。
青、緑、銀。
それはまるで、灯台が潮の歌を歌い返すかのようだった。
🌊 第三章:航路の記憶
光が走った。
結晶塔の頂点から、細い光の束が海中へと伸び、渦潮の周縁に幾何学的な線を描く。
💬 「航路だ……」
そこには、危険な流れを避けるための線が浮かび上がっていた。
しかも、それは固定された道ではなく、渦の回転に合わせてゆっくりと変形している。
🐬 『灯台は潮流のパターンを学習していた。つまり、海の動きを“記憶”していたと推定』
💬 「海の記憶……」
マリンは、灯台の内部で微かに鳴る音に耳を澄ませた。
低く、長く、安らかな調べ。
それは、古代の航海者たちがこの海で出会った嵐や歓喜、そして祈りを映したものに違いない。
💬 「灯台はただの機械じゃない。ここを渡った人たちの想いが残ってる」
🐚 終章:光の道を行く
🐬 『航路点灯、安定。進行速度、推奨値に合わせます』
💬 「よし、行こう。潮の道を、たどって」
シェル号は灯台の光に導かれて、渦潮の門を抜けていく。
光の線は、海流のうねりに合わせて柔らかく揺れ、船体を守るように寄り添った。
渦の中心を超えた瞬間、海は嘘のように静かになった。
遠くには、まだ誰も見たことのない青い海盆が広がっている。
マリンは振り返り、結晶灯台を見上げた。
灯台は静かに、次に来る航海者のための歌を奏でている。
💬 「ありがとう、灯台。私たちも、いつか誰かの航路になれるかな」
🐬 ドルフィンは短く鳴いた。
肯定にも、約束にも聞こえる音だった。
🐚 Aquaria Series – A-10 🐚
惑星アクエリアの冒険は続く…