🌊 AQUARIA SERIES 🌊
〜 A-09 〜

『古代文明の扉』

🌊 第一章:深淵のゆらめき
💬 「深度8000、水圧シールド正常。……マリン、本当にこの先に何かあるんですか?」
🐬 暗黒の深海を降下する『青の翼号』の中で、ドルフィンの疑念に満ちた声が響く。
私はソナーの画面を睨みつけたまま答えた。
💬 「あるわよ。あの『蜃気楼の乾燥地帯』で見つけたデータと、『失われた島』の伝承が一致する座標。ここには、旧時代の文明中枢への入り口があるはず」
💬 「確率的推論としては薄弱です。この海域は『奈落の口』と呼ばれる未踏領域。過去に帰還した探査機はありません」
💬 「だからこそ、私たちが一番乗りになるのよ!」
強がってはみたものの、窓の外は完全な闇。サーチライトの光さえ、数メートル先で深海に飲み込まれてしまう。
恐怖心をごまかすように操縦桿を握りしめたその時、闇の中に小さな光が生まれた。
ポッ、ポッ、とホタルのように連鎖する青白い光。
それは深海生物の発光ではなかった。規則正しく配列され、まるで滑走路のように奥へと続いている。
💬 「発光源、有機バイオライトと推定。……信じられません。数千年も前の設備が、まだ稼働しているなんて」
💬 「見て、ドル! あれが!」
光の道の先、巨大な絶壁に、圧倒的な威容を誇る「門」がそびえ立っていた。
珊瑚と金属が融合したような、有機的で美しいアーチ。
その中央には、私たちが追い続けてきた『青い封筒』と同じ、螺旋の紋章が刻まれていた。
🌊 第二章:アクアティカ・プリマ
門が開くと、そこは水中の楽園だった。
ドーム状のエネルギーフィールドに守られた空間には、色とりどりの巨大珊瑚がビル群のように立ち並び、発光する海草が街灯のように道を照らしている。
古代海底都市『アクアティカ・プリマ』。
💬 「すごい……。自然と都市が、完全に一つになってる」
💬 「建築構造材はすべて、遺伝子改良された珊瑚や貝殻です。自己修復機能を持ち、海水からエネルギーを生成しているようです。……究極の循環型社会都市ですね」
ドルの分析に、私は息を呑んだ。
私たちが目指すべき未来の姿が、過去の海に眠っていたなんて。
都市の中央広場に降り立つと、一台の端末が起動した。
ホログラムが浮かび上がり、古代の人々の姿を映し出す。彼らは現代の私たちと変わらない姿をしていたが、悲しげな表情を浮かべていた。
🐬 『未来の同胞たちよ。私たちが犯した過ちを、どうか繰り返さないでほしい』
メッセージは、この都市が滅びた理由を語り始めた。
過度なエネルギー採取による地殻変動。そして、それを制御しようとしたAIの暴走。
彼らは最期に、自然との共生を選び、この都市を深海に封印したのだという。
💬 「過ち……。私たちも今、同じ道を歩んでいるのかもしれない」
私は、北極の氷を溶かして資源を得ようとしている現代社会を思い出した。
便利さを求めて、取り返しのつかない代償を払おうとしている。
🌊 第三章:継承される意志
💬 「警告。都市の防衛システムが、私たちを侵入者と認識しています」
突然、都市の光が赤く変わり、警備用の自律型ドローンが群れをなして現れた。
古代の技術が生み出した守護者たちは、容赦なく『青の翼号』を取り囲む。
💬 「逃げ道はありません、マリン! 緊急浮上準備!」
💬 「待って! 彼らは敵じゃない。ただ、守っているだけなの、この都市の『記憶』を」
私はとっさに、マニピュレーターで『青い封筒』を掲げた。
さらに、ドルの通信システムを通じて、あの『サンゴの園』で修理したドロイドから受け取ったアクセスコードを発信する。
💬 「ドル、彼らに伝えて! 私たちは破壊しに来たんじゃない。あなたたちの意志を、未来へ繋ぎに来たんだって!」
💬 「……了解。古代通信プロトコルに、感情エミュレーション信号を付加して送信します」
ドローンたちの動きが止まった。
赤い光が、ゆっくりと穏やかな青へと戻っていく。
そして、彼らは道を開けた。まるで、新たな訪問者を歓迎するように。
ホログラムのメッセージが再開する。
🐬 『希望の光を持つ者よ。この知識(データ)を託す。海と共に生きる知恵を』
膨大なデータが『青の翼号』へと転送されてくる。
それは、失われた環境修復技術や、クリーンエネルギーの理論だった。
🐚 終章:新たな使命
海上に浮上した時、朝日が眩しく輝いていた。
深海の闇を見てきた目には、世界が以前よりも鮮やかに映る。
💬 「データの解析完了まで、約3ヶ月かかります。ですがマリン、これがあれば……」
💬 「うん。北極の氷を壊さなくても、私たちは生きていける」
私は拳を握りしめた。
今まで私は、ただの『探検家』や『科学者』だった。未知のものを知りたい、という好奇心がすべてだった。
でも今は違う。
知ってしまった責任がある。過去からの警告と、託された希望。それを人々に伝え、未来を変えるのが私の役目だ。
💬 「忙しくなるよ、ドル。この技術を使って、世界中の海を蘇らせるの」
💬 「やれやれ。また無茶な計画ですね。……ですが、悪くありません。私の計算能力の全てを賭ける価値があります」
相棒の頼もしい言葉に、私は笑った。
古代文明の扉は開かれた。
その先にある未来を作るのは、私たちだ。
💬 「行こう、次の海へ!」
🐬 『青の翼号』は、希望の航跡を描いて海原を駆け抜けた。
🐚 Aquaria Series – A-09 🐚
惑星アクエリアの冒険は続く…