【A-07】蜃気楼の乾燥地帯
kome
🌊 AQUARIA SERIES 🌊
〜 A-07 〜
『蜃気楼の乾燥地帯』
🌊 第一章:幻のD-Point
💬 「ねえ、ドルフィン。『傘』って知ってる?」
マリンは操縦席で古いデータチップを回しながら尋ねた。
「古代の道具ですね。空から降る水を避けるための布製の円盤です。……ですがマリン、この世界に『降る水(雨)』は存在しません。したがって傘は無用の長物です」
「夢がないなぁ。私は一度でいいから見てみたいの。濡れていない世界を」
マリンは操縦席で古いデータチップを回しながら尋ねた。
「古代の道具ですね。空から降る水を避けるための布製の円盤です。……ですがマリン、この世界に『降る水(雨)』は存在しません。したがって傘は無用の長物です」
「夢がないなぁ。私は一度でいいから見てみたいの。濡れていない世界を」
彼らが目指しているのは、深海流のさらに奥、海図にポツンと記された『D-Point』。
伝説によれば、そこには「乾いた場所」が残されているという。
水に覆われたこの惑星アクエリアで、それは最も禁忌で、最も魅力的な楽園の噂だった。
伝説によれば、そこには「乾いた場所」が残されているという。
水に覆われたこの惑星アクエリアで、それは最も禁忌で、最も魅力的な楽園の噂だった。
💬 「接近します。……奇妙ですね。ソナーの反射が帰ってきません」
ドルフィンの声に緊張が混じる。
ライトが照らし出したのは、巨大なガラスの球体だった。ヘドロの海に輝く、完全な透明。
「これが……D-Point?」
ドルフィンの声に緊張が混じる。
ライトが照らし出したのは、巨大なガラスの球体だった。ヘドロの海に輝く、完全な透明。
「これが……D-Point?」
🌊 第二章:痛い空気
球体にはドッキングポートが生きていた。
排水プロセスを経て、マリンは球体の内部へと足を踏み入れる。
排水プロセスを経て、マリンは球体の内部へと足を踏み入れる。
プシューッ。
気密ハッチが開いた瞬間、マリンの肌を奇妙な感覚が襲った。
「……痛い」
頬がピリピリする。髪の毛がふわりと浮き上がり、パチッという小さな音と共に指先が光った。
「静電気です」ドルフィンがスピーカーから告げる。「ここの大気湿度は0.02%。極度の乾燥状態です」
気密ハッチが開いた瞬間、マリンの肌を奇妙な感覚が襲った。
「……痛い」
頬がピリピリする。髪の毛がふわりと浮き上がり、パチッという小さな音と共に指先が光った。
「静電気です」ドルフィンがスピーカーから告げる。「ここの大気湿度は0.02%。極度の乾燥状態です」
そこは、博物館のようだった。
枯れた植物の標本。紙の本。そして錆びていない金属の機械たち。
すべてがパリパリに乾いていて、時が止まっている。
マリンは深呼吸をした。喉が焼けるように渇く。
「これが、かつての人たちが住んでいた空気……」
憧れていた世界。けれど、ちっとも快適じゃない。
目を開けているだけで涙が蒸発し、唇が裂けていくようだ。
枯れた植物の標本。紙の本。そして錆びていない金属の機械たち。
すべてがパリパリに乾いていて、時が止まっている。
マリンは深呼吸をした。喉が焼けるように渇く。
「これが、かつての人たちが住んでいた空気……」
憧れていた世界。けれど、ちっとも快適じゃない。
目を開けているだけで涙が蒸発し、唇が裂けていくようだ。
🌊 第三章:ガラスの結末
🐬 「警告。外壁の耐圧限界を超えています」
ドルフィンの無機質な声が響く。
「この施設は古代の『環境保存カプセル』ですが、維持システムが暴走しています。乾燥を保つためにエネルギーを使いすぎました」
ドルフィンの無機質な声が響く。
「この施設は古代の『環境保存カプセル』ですが、維持システムが暴走しています。乾燥を保つためにエネルギーを使いすぎました」
ミシッ……。
頭上のガラスに亀裂が入る。
その向こうには、圧倒的な質量の暗い海水が、今か今かと押し寄せようとしていた。
乾いた場所は、あまりにも脆い。
頭上のガラスに亀裂が入る。
その向こうには、圧倒的な質量の暗い海水が、今か今かと押し寄せようとしていた。
乾いた場所は、あまりにも脆い。
💬 「マリン、退避してください! あなたの生体組織は、長時間の乾燥に耐えられません!」
「でも、せっかく見つけたのに!」
「それは蜃気楼です! 私たちの世界では、水分こそが生命線なのです!」
「でも、せっかく見つけたのに!」
「それは蜃気楼です! 私たちの世界では、水分こそが生命線なのです!」
🐬 パリーン!!
ガラスが砕け散った。
強烈な水圧と共に、海水が雪崩れ込んでくる。
乾いた本が、標本が、一瞬で水に飲み込まれ、ドロドロに溶けていく。
マリンはドルフィンのハッチに飛び込んだ。
ガラスが砕け散った。
強烈な水圧と共に、海水が雪崩れ込んでくる。
乾いた本が、標本が、一瞬で水に飲み込まれ、ドロドロに溶けていく。
マリンはドルフィンのハッチに飛び込んだ。
🐚 エピローグ:湿った安らぎ
コックピットの中。
海水に満たされた空間で、マリンは大きく息を吸い込んだ。
液体酸素を含んだ水が肺を満たす。
痛んでいた喉が潤い、肌のピリピリが消えていく。
海水に満たされた空間で、マリンは大きく息を吸い込んだ。
液体酸素を含んだ水が肺を満たす。
痛んでいた喉が潤い、肌のピリピリが消えていく。
💬 「……気持ちいい」
マリンは呟いた。
あんなに憧れていた乾燥よりも、この重くて冷たい水の中の方が、ずっと息がしやすいなんて。
マリンは呟いた。
あんなに憧れていた乾燥よりも、この重くて冷たい水の中の方が、ずっと息がしやすいなんて。
🐬 「D-Pointは消滅しました」ドルフィンが淡々と報告する。「ですが、データの一部は回収しました。……『傘』の設計図も」
「ふふ、そう。ありがとう」
「ふふ、そう。ありがとう」
マリンは窓の外を見た。
崩れ落ちたガラスドームの破片が、キラキラと深海に沈んでいく。
それはまるで、かつてこの星に降っていたという『雨』のようだった。
崩れ落ちたガラスドームの破片が、キラキラと深海に沈んでいく。
それはまるで、かつてこの星に降っていたという『雨』のようだった。
🐬 「帰ろう、ドルフィン。私たちの家に」
潜水艇は静かに反転し、広大で湿った青の世界へと溶けていった。
少しだけ塩辛い味がしたのは、きっと古代の涙が混ざったからだ。
潜水艇は静かに反転し、広大で湿った青の世界へと溶けていった。
少しだけ塩辛い味がしたのは、きっと古代の涙が混ざったからだ。
🐚 Aquaria Series – A-07 🐚
惑星アクエリアの冒険は続く…