🌊 AQUARIA SERIES 🌊
〜 A-04 〜
💬 「警告。深度800。船体圧力、許容範囲内ですが、これ以上の潜行は推奨されません」
コックピットに響く無機質な、しかしどこか心配そうな機械音声。私は操縦桿を握る手を少しだけ緩め、モニターに映る深海の闇を見つめた。
💬 「大丈夫だよ、ドル。あと少し……この座標に、きっと『何か』があるはずだから」
私の名前はマリン。水の惑星アクエリアで、島々の間を手紙や荷物でつなぐ『海洋郵便屋(シー・ポスト)』をしている。
相棒のイルカ型自律支援ユニット『ドルフィン』——通称ドルと共に、愛機である小型潜水艇『青の翼号』で、今日は配達ではなく、ある「探し物」に来ていた。
きっかけは、先日見つけた『青い封筒』だ。
差出人不明のその手紙には、失われたはずの陸地の伝承と、この海域を示す座標、そして奇妙な文様が記されていたのだ。
💬 「ソナー反応あり。……前方300メートル。巨大な人工建造物を検知」
ドルの報告に、息を呑む。
ライトをハイビームに切り替えると、闇の中からぼんやりと、しかし圧倒的な存在感を持って、巨大な影が浮かび上がってきた。
💬 「これが……深海神殿……」
それは、アクエリアの海底に眠るとされる古代文明の遺跡だった。
滑らかな曲線を描く柱、発光する苔に覆われた壁面。現在の珊瑚都市の建築とは明らかに異なる、重厚で神秘的なデザイン。
💬 「すごい……本当にあったんだ」
私は慎重に潜水艇を近づけた。神殿の入り口と思しき巨大な扉の前で、ホバリングさせる。
扉には、封筒にあったのと同じ、奇妙な文様が刻まれている。
💬 「解析開始。……照合完了。古代アクエリア語の変種と推測されます」
ドルの目が青く明滅する。
「マリン、扉の中央を見てください。円形のくぼみが3つ。そしてその周囲に、海洋生物のレリーフがあります」
私はズームカメラを操作して確認した。
上部に『満月』を表すような円。
右下に『太陽』。
左下に『星』。
そしてそれぞれの周りに、カメ、クラゲ、サメのレリーフが彫られている。
💬 「これ、パズルね」
私は『青い封筒』の紙片を取り出し、ライトに透かしてみた。そこには短い詩が書かれている。
月の光を浴びて 堅い甲羅は輝く
星の海を漂い 透き通る体は舞う
太陽の熱を避け 深き闇の狩人は潜む
💬 「なるほど……それぞれの天体と、関係の深い生き物を合わせればいいんだ」
  1. と関係があるのは……「堅い甲羅」だから、カメ(産卵は満月の夜と言われる)。
  2. と関係があるのは……「透き通る体」で「星の海(夜の海)」、これはクラゲ
  3. 太陽を避ける「闇の狩人」……これは深海を好むサメ
💬 「ドル、マニピュレーター操作! 『月』に『カメ』、『星』に『クラゲ』、『太陽』に『サメ』の石版をはめ込んで!」
💬 「了解。微細操作モードへ移行」
ドルの的確なアシストで、潜水艇のアームが石版を動かす。
カチリ、カチリ、と重い音が水中に響く(実際には聞こえないけれど、振動が伝わってくる)。
最後の『サメ』をはめ込んだ瞬間——。
ゴゴゴゴゴ……!!
地響きと共に、巨大な扉がゆっくりと開き始めた。
それと同時に、警報アラムが鳴り響く。
💬 「警告! 警告! 周辺水流の急激な変化を検知! 内部からの強い吸い込みが発生しています!」
💬 「えっ!?」
開いた扉の奥から、ものすごい勢いで海水が吸い込まれていく。
まるでブラックホールだ。小さな『青の翼号』は、木の葉のように翻弄される。
💬 「出力最大! バックして!」
「スラスター全開! ……駄目です、水流が強すぎます! このままでは外壁が岩盤に接触します!」
ガガガッ!!
嫌な音がして船体が揺れる。
酸素供給システムのインジケーターが赤く点滅し始めた。
💬 「酸素配管に損傷! 予備タンクへ切り替えましたが、残量は20分です!」
20分……。ここで立ち往生したら、窒息してしまう。
パニックになりかけた私の視界に、開いた扉の奥、台座の上に青白く光る物体が見えた。
💬 「あれは……!」
直感でわかった。あれこそが、私たちが探すべきものだ。
しかし、この激流の中でどうやって?
💬 「マリン、計算しました。今の吸い込みは、一定のリズムがあります。30秒に一度、わずかに弱まる瞬間があります。そのタイミングで突入し、対象を回収、そのままスイングバイの要領で脱出します」
💬 「そんな無茶な……! 失敗したら?」
💬 「私を信じてください。……相棒でしょう?」
ドルの機械的な、でも力強い言葉。
私は深呼吸をして、操縦桿を握り直した。
💬 「わかった。行こう、ドル!」
💬 「カウントダウン。3、2、1……今です!」
私はスロットルを全開にした。
激流の波に乗るように、神殿内部へ突っ込む。
水圧にミシミシと悲鳴を上げる船体。
目の前に迫る台座。
💬 「アーム展開! キャッチ!」
マジックハンドが光る物体——結晶のような石——をガッチリと掴んだ。
💬 「反転! 急上昇!」
吸い込みが強まる直前、遠心力を利用して一気に扉の外へ。
背後で再び強烈な水流が発生したが、私たちはその勢いすら利用して、深海から弾き出されるように上昇していった。
***
💬 「深度100……50……浮上します」
海面に顔を出すと、そこは満天の星空だった。
プハァ、とキャノピーを開けて外の空気を吸う。少し塩辛い、でも最高に美味しい空気。
💬 「生きてる……」
「生存確率、わずか12%でした。極めて危険な賭けでしたよ、マリン」
「でも、成功したじゃない」
私は手元の結晶を見た。
『深海神殿の記憶』。
青く脈打つその石は、次の目的地を指し示しているように見えた。
そして、その光のリズムは……どこか、クジラの歌声に似ている気がした。
💬 「次は……クジラさんに会いに行くことになるかもね」
私はドルに微笑みかけ、エンジンを再始動させた。
冒険は、まだ始まったばかりだ。
🐚 Aquaria Series – A-04 🐚
惑星アクエリアの冒険は続く…