【S-02】プロローグ:水晶のささやき
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🎵 SOLARIS SERIES ✨
〜 S-02 〜
二つの太陽が沈みかけ、惑星ソラリスの空が紫と茜色に染まる頃、水晶の森は歌い始める。
風が吹き抜けるたび、巨大な結晶質の樹木たちが微細に振動し、澄んだ鐘の音のような響きを奏でるのだ。それは「星の呼吸」とも呼ばれ、この星に住む人々にとっては安らぎの旋律子守唄だった。
だが、その日の「音」は、どこか違っていた。
✨ 「……ピコ、聞こえるか?」
リオンは足を止め、銀色のブーツで苔むした地面を踏みしめた。腰に下げた革のベルトには、大小様々な音叉が吊るされている。彼は耳をそばだて、風の音に混じる違和感を探った。
✨ 彼の肩のあたりで、ソフトボールほどの大きさの球体がふわりと浮遊した。相棒のピコだ。古代遺跡から発掘されたこの自律型メカは、リオンの問いかけに応えるように、その一つ目を青く明滅させた。
✨ 『ピ、ピ……解析中。方位、北北東。距離、三百ルージュ。微弱な不協和音(ディソナンス)を検知』
✨ ピコの電子音声は、いつものように無機質だが、リオンにはその奥に潜む緊張が感じ取れた。
💬 「やっぱりな。昨日から森の調子がおかしいと思ってたんだ」
🎵 リオンはゴーグルを額に上げ、乱れた白銀の髪をかき上げた。「行こう。完全に和音が崩れる前に、調律しなきゃな」
二人は水晶の森を抜け、北北東へと進路を取った。地面から突き出した水晶の根が複雑に絡み合い、行く手を阻む。リオンは慣れた身のこなしでそれを飛び越え、時折、手袋をした手で水晶の幹に触れ、その振動を確かめた。
やがて、木々の隙間から開けた場所に出た。そこは古い広場で、中央には半分ほど土に埋もれた古代のオベリスクが立っていた。
かつての「音響文明」の遺跡だ。
オベリスクの表面には複雑な幾何学模様が刻まれており、本来ならばそこから美しい和音が周囲に放射され、森の生態系を維持しているはずだった。しかし今は、耳障りな低い唸り声を上げている。
💬 「ひどいな……。回路がショートしかけてる」
リオンはオベリスクの前にしゃがみ込み、道具袋から一本の音叉を取り出した。柄には「440Hz」と刻まれている。
✨ 「ピコ、同調モード。ベース音をスキャンしてくれ」
✨ 『了解。スキャン開始……』
✨ ピコがオベリスクの周りを旋回し、赤い光線を走らせる。
✨ 『基本周波数、変動あり。ノイズ率、四〇パーセント上昇』
✨ 「よし。僕が基準音を入れる。ピコは増幅(アンプ)係数を頼む」
🎵 リオンは音叉を膝で軽く叩き、オベリスクの共鳴孔へと近づけた。「キィーン」という清冽な音が響き渡る。
その瞬間、オベリスクの唸り声が強まった。まるで治療を拒む獣のようだ。黒いノイズが火花のように散る。
💬 「暴れるなよ……すぐ楽にしてやるから」
リオンは目を閉じ、意識を集中させた。音叉の振動を指先で感じ、それを自分の体内の魔力(マナ)と共鳴させる。
彼は「調律師」。音を操り、世界をあるべき姿に戻す技術者だ。
彼は「調律師」。音を操り、世界をあるべき姿に戻す技術者だ。
💬 「……響け、還れ。本来の旋律へ」
✨ 音叉の音が、リオンの意思を乗せて強くなる。ピコがそれに合わせて光を放ち、音の波を可視化させる。黄金色の波紋がオベリスクを包み込み、黒いノイズを中和していく。
数瞬の拮抗の後。
🎵 不協和音は唐突に消え失せた。代わりに、透き通るような長調の和音が、オベリスクから溢れ出した。表面の幾何学模様が淡い青色に発光し始める。
💬 「ふぅ……。なんとかなったか」
リオンは息を吐き、額の汗をぬぐった。
水晶の森のざわめきが、再び穏やかなものに戻っていく。
水晶の森のざわめきが、再び穏やかなものに戻っていく。
✨ 『修正完了。システム、安定。……ナイスワーク、相棒』
✨ ピコがくるりと宙返りをして、リオンの肩に着地した。
💬 「ああ。でも、これで終わりじゃない気がする」
リオンはオベリスクを見上げた。古代の遺跡がこれほど不安定になることは珍しい。何かが、この星の「音」を狂わせようとしているのかもしれない。
✨ 「帰ろう、ピコ。今日はシチューを作り置きしてあるんだ」
✨ 『了解。腹が減っては、調律はできぬ』
💬 「お前は食べないだろ」
リオンは苦笑しながら、再び森の中へと歩き出した。
頭上では、二つの太陽が完全に沈み、満点の星空が広がり始めていた。
頭上では、二つの太陽が完全に沈み、満点の星空が広がり始めていた。
彼らの旅は、まだ始まったばかりだ。
🎹 Solaris Series – S-02 🎶
音の旅は続く…