📖 RAGTELLER 💎
〜 R-04 〜
祭りの夜、ミラヴァルは炎に包まれていた。”A night of fire.”(炎の夜)黒曜石の塔を越えて燃え立つ火柱、群衆の唱和、巻物が次々と炎に投げ込まれる。忘却を礼賛する声が、夜空を震わせていた。”Forget and be saved.”(忘れれば救われる)という叫びが、街を満たしていた。
しかし、緑はその流れに逆らうように歩いていた。
健太とリノルを伴い、誰も入れぬはずの灰の殿堂へと忍び込む。冷えた石の回廊を進むほど、胸に抱くリュートが熱を帯びていった。”Step by step”(一歩ずつ)、彼女の覚悟は固まっていく。
祭壇の中央。炎がうねり、まるで生き物のように彼女を呼んでいた。”Come closer.”(もっと近くへ)と囁くように。
💬 「やめてください!」
健太の声が震える。
「先生、今ここで弾けば……あなたも、街も滅びます!”Everything will burn.”(すべて燃え尽きます)」
📖 リノルが一歩前へ出る。その瞳は炎と同じように揺れていた。
「違う。弾け。お前の声は、この街を目覚めさせる。――渡せ、その楽器を。”Give it to me.”(それを渡せ)」
二人の声がぶつかり合い、緑の胸を裂いた。
忠誠か、真実か。守られることか、解き放たれることか。”Duty or truth.”(義務か真実か)
リュートの胴が脈打つ。
弦に触れた瞬間、空気が震え、炎が一斉に傾いた。”The hall held its breath.”(殿堂そのものが息を止めた)
――奏でた。”She played.”(彼女は弾いた)
💎 轟音とともに、押し潰されていた記憶が解き放たれる。
反乱の旗が翻る。
叫ぶ人々。
母と名乗る女が仮面をかぶり、赤子を炎に差し出す幻。
その声が緑の耳を打った。
「リラ……生きて。”Live.”(生きて)」
殿堂が揺れ、市民が悲鳴をあげる。大神官たちが立ち上がり、仮面を外して叫んだ。
「やめろ! それは禁じられた歌だ!”Forbidden song!”(禁じられた歌だ)」
📖 リノルがリュートに手を伸ばした。その顔は歓喜に歪み、渇いた狼のようだった。
「もっとだ! その音を俺に寄越せば、記憶を支配できる!”I can rule them all.”(すべてを支配できる)」
💬 「先生!」健太が叫ぶ。剣を抜き、彼女を守るように立ちはだかった。”I won’t let him touch you.”(触れさせない)
緑は涙を流しながら、再び弦をかき鳴らした。
忘却ではなく、目覚めのために。”Not for oblivion, but awakening.”(忘却ではなく、目覚めのために)
その響きはリノルを包み、炎が彼の影を呑み込んだ。彼の最後の叫びは、破れた旋律のように夜に消えた。”Then silence.”(そして静寂)
📖 仮面は砕け、市民たちは一斉に声を失った。
だが次の瞬間――忘れられた愛、失った子、古い歌、あらゆる記憶が人々の胸に押し寄せ、街は嗚咽と歓喜で震えた。”They remembered everything.”(人々はすべてを思い出した)
📖 緑はリュートを抱き締めた。
炎はもう、忘却の焔ではなかった。
記憶を映す、灯火だった。”A light for remembering.”(思い出すための灯りだった)
🔴 RAGteller Series – R-04 📖
物語は続く… in Pulse Layer