📕 HUMAN SERIES 📖
〜 H-06 〜

『雨のホームと一分遅れの時計』

📕 第一章:一分のずれ
雨が細く降る朝、直樹はホームの時計を見上げた。
時刻は7時48分。だが、腕時計は7時49分を指している。
💬 「また、遅れてるな」
直樹は駅員として三十年、この時計の針を見てきた。
一分のずれは、なぜか今日だけ気になった。
📕 第二章:整える仕事
直樹は工具箱を持って時計盤の裏へ回った。
配線は問題ない。電源も安定している。
💬 「じゃあ、なぜ?」
ホームを見渡すと、雨の傘がゆっくり揺れている。
列車が入ってくる。乗客の足取りは、いつもより慎重だ。
💬 「一分あると、焦らなくて済む」
ふと、そんな声が聞こえた気がした。
📕 第三章:誰かの時間
直樹は窓口の常連、早朝の清掃員・真由美に訊いた。
「ホームの時計、少し遅れてるって知ってる?」
真由美は笑った。
「知ってるよ。遅れてるから助かってる人もいるんだよ」
💬 「誰が遅らせたんだ?」
💬 「昔の駅長らしいよ。雨の日は足元が滑るから、一分だけ余裕を作ろうって」
直樹は黙って頷いた。
時計の遅れは、手抜きではなく、優しさだった。
📖 終章:そのままにする
直樹は工具箱を閉じた。
一分のずれを直すことは簡単だ。
けれど、その一分は誰かの息を整える時間でもある。
💬 「じゃあ、このままでいい」
雨はまだ降っていた。
時計の針は、一分遅れで歩き続ける。
直樹はホームに立ち、列車の到着を告げるベルを静かに鳴らした。
📕 Human Series – H-06 📖
人と人をつなぐ、小さな物語…