【S-11】機械仕掛けの楽団
kome
🎵 SOLARIS SERIES ✨
〜 S-11 〜
カチ、コチ、カチ、コチ……。
島全体が、一つの巨大な時計のようだった。
「歯車の島(ギア・アイル)」。
地面からは蒸気が噴き出し、建物の壁面には大小様々な歯車が噛み合いながら回っている。
「歯車の島(ギア・アイル)」。
地面からは蒸気が噴き出し、建物の壁面には大小様々な歯車が噛み合いながら回っている。
💬 「すごいな……。これ全部、地下の地熱蒸気エンジンで動いているのか」
リオンはゴーグルをずらし、目の前の光景に息を呑んだ。
この島の中心にある広場には、伝説の「自動演奏楽団(オートマタ・オーケストラ)」がある。
かつては毎日正午になると、百体の機械人形たちが一斉に楽器を奏で、島中に幸福な音楽を響かせていたという。
この島の中心にある広場には、伝説の「自動演奏楽団(オートマタ・オーケストラ)」がある。
かつては毎日正午になると、百体の機械人形たちが一斉に楽器を奏で、島中に幸福な音楽を響かせていたという。
しかし今、広場は静まり返っていた。
人形たちは楽器を構えたまま、錆びついたように動かない。
人形たちは楽器を構えたまま、錆びついたように動かない。
💬 「おや、旅の調律師かね?」
声をかけてきたのは、油にまみれた作業着を着た老人だった。
この島の整備士長、ガストンだ。
この島の整備士長、ガストンだ。
💬 「わしらも手は尽くしたんじゃ。部品は全て新品に交換した。動力パイプも清掃した。設計図通り、完璧に組み上げてある。……だのに、こいつらは動かんのじゃよ」
ガストンは悔しそうに、指揮者の人形の足元をスパナで叩いた。
✨ 『ピコ~……(構造的欠陥ナシ。エネルギー供給正常)』
ピコも首を傾げている(ように体を揺らした)。
ピコも首を傾げている(ように体を揺らした)。
💬 「見せてもらっていいですか?」
リオンは指揮者の人形に近づいた。
真鍮で作られた美しい指先。内部には無数のゼンマイとカムが詰まっている。
僕は耳を澄ませた。
機械の音を聞くために。
真鍮で作られた美しい指先。内部には無数のゼンマイとカムが詰まっている。
僕は耳を澄ませた。
機械の音を聞くために。
……シーン……。
いや、違う、完全に無音じゃない。
微かに、本当に微かに、「ズレ」ている音がする。
カムが回ろうとして、何かに引っかかって止まる音。部品同士が「嫌がっている」ような摩擦音。
微かに、本当に微かに、「ズレ」ている音がする。
カムが回ろうとして、何かに引っかかって止まる音。部品同士が「嫌がっている」ような摩擦音。
💬 「……『ため息』をついてる」
「あん?」
「あん?」
💬 「部品が新品すぎて、馴染んでないんです。それに、全ての歯車が『正確すぎ』ます」
💬 「正確で何が悪い! 時計仕掛けは正確さが命じゃろう!」
ガストンが怒鳴る。
ガストンが怒鳴る。
💬 「時計ならそうです。でも、これは『楽器』です」
リオンは音叉を取り出した。
「音楽には『揺らぎ(グルーヴ)』が必要です。完全にデジタルな正確さで配置された歯車は、かえって互いの振動を殺し合ってしまう。……ピコ、メトロノーム・モード。BPMを1/100秒単位で解析してくれ」
「音楽には『揺らぎ(グルーヴ)』が必要です。完全にデジタルな正確さで配置された歯車は、かえって互いの振動を殺し合ってしまう。……ピコ、メトロノーム・モード。BPMを1/100秒単位で解析してくれ」
✨ 『ピコッ!(ラジャー!)』
リオンは指揮者の胸部パネルを開け、メインの調速機(ガバナー)に指を触れた。
ほんの少し、髪の毛一本分だけ、バネの張力を緩める。
次に、ヴァイオリン人形の右腕の関節。ここには逆に、少し固めのグリスを塗る。
ほんの少し、髪の毛一本分だけ、バネの張力を緩める。
次に、ヴァイオリン人形の右腕の関節。ここには逆に、少し固めのグリスを塗る。
💬 「何をしてるんじゃ……そんな微調整で……」
💬 「機械にも『呼吸』をさせるんです。吸って、吐いて。その隙間を作ってやる」
リオンの作業は一時間続き、太陽が真上に登った。
正午だ。
正午だ。
💬 「さあ、動いてくれ」
リオンが最後の調整ネジを閉め、スタートレバーを引いた。
シュゥゥォォォォ……!
蒸気の音が響く。
指揮者の人形が、ゆっくりとタクトを振り上げた。
その動きは、先ほどまでの硬さはなく、まるで人間のように滑らかだった。
指揮者の人形が、ゆっくりとタクトを振り上げた。
その動きは、先ほどまでの硬さはなく、まるで人間のように滑らかだった。
カッ!
タクトが振り下ろされる。
同時に、百体の人形たちが動き出した。
同時に、百体の人形たちが動き出した。
ジャンッ!!
🎵 弦楽器の旋律。管楽器の咆哮。打楽器の鼓動。
それらが重なり合い、圧倒的な音の波となって広場に溢れ出した。
それらが重なり合い、圧倒的な音の波となって広場に溢れ出した。
💬 「おお……! おおぉぉ……!」
ガストンが涙を流して膝をつく。
「これじゃ……わしが子供の頃に聞いた、あの音じゃ……!」
ガストンが涙を流して膝をつく。
「これじゃ……わしが子供の頃に聞いた、あの音じゃ……!」
🎵 正確無比な機械演奏ではない。
少しだけテンポが揺らぎ、それが温かみとなって心に響く、本物の「音楽」。
少しだけテンポが揺らぎ、それが温かみとなって心に響く、本物の「音楽」。
✨ 『ピコピコ~♪(グルーヴ検知! 最高!)』
ピコも空中でくるくるとダンスを踊る。
ピコも空中でくるくるとダンスを踊る。
リオンは額の汗を拭い、満足げにその演奏を見上げた。
「機械だって、歌いたがってたんだ。ただ、歌い方を忘れてただけで」
「機械だって、歌いたがってたんだ。ただ、歌い方を忘れてただけで」
💬 「調律師……いや、マエストロ(巨匠)よ。あんたのおかげだ」
演奏が終わると、広場は島民たちの歓声に包まれた。
リオンは静かに道具を片付ける。
彼の音叉は、また一つ、新しい音を記憶したようだった。
リオンは静かに道具を片付ける。
彼の音叉は、また一つ、新しい音を記憶したようだった。
✨ 「いい音だったな、ピコ」
『ピコッ!(うん!)』
『ピコッ!(うん!)』
機械仕掛けの楽団は、明日も明後日も、この島に時と音楽を告げ続けるだろう。
人間と機械の、絶妙な調和(ハーモニー)と共に。
人間と機械の、絶妙な調和(ハーモニー)と共に。
🎹 Solaris Series – S-11 🎶
音の旅は続く…