【R-17】錆びた庭師の青い薔薇
kome
📖 RAGTELLER 💎
〜 R-17 〜
『錆びた庭師の青い薔薇』
🔴 第一章:眠れる森のロボット
第四ドームの拡張工事に伴い、封鎖されていた「旧第1植物プラント」の隔壁が開かれた。
そこは、時間が止まった場所だった。
枯れ果てた植物の残骸。埃を被った水槽。
そして、その中央に、苔むしたロボットが座り込んでいた。
そこは、時間が止まった場所だった。
枯れ果てた植物の残骸。埃を被った水槽。
そして、その中央に、苔むしたロボットが座り込んでいた。
💬 「これ、初代の汎用作業型だ」
調査に入った蒼生が、ライトで照らした。
「型番……G-04。通称『ガードナー』」
調査に入った蒼生が、ライトで照らした。
「型番……G-04。通称『ガードナー』」
50年前の入植初期に使われていた旧式モデルだ。
関節は錆びつき、塗装は剥げ落ちている。胸のパワーランプはもちろん消えている。
関節は錆びつき、塗装は剥げ落ちている。胸のパワーランプはもちろん消えている。
💬 「完全にスクラップだね」
工事業者が言った。
「撤去してリサイクルに回そう」
工事業者が言った。
「撤去してリサイクルに回そう」
その時、蒼生の懐でNOAが震えた。
「待って」
NOAが飛び出し、錆びたロボットの目の前でホバリングした。
「微弱な反応がある。……彼はまだ、動こうとしている」
「待って」
NOAが飛び出し、錆びたロボットの目の前でホバリングした。
「微弱な反応がある。……彼はまだ、動こうとしている」
🔴 第二章:青い夢
NOAがインターフェースケーブルを伸ばし、G-04のポートに接続した。
「バックアップ電源、供給開始。Pulse Layerリンク、確立」
「バックアップ電源、供給開始。Pulse Layerリンク、確立」
ジジ……ジ……。
G-04のカメラアイが、赤く明滅した。
首が、ギギギと軋んだ音を立てて動く。
G-04のカメラアイが、赤く明滅した。
首が、ギギギと軋んだ音を立てて動く。
📖 『……水……』
スピーカーから、ノイズ混じりの音声が漏れた。
『……水ヲ……ヤラ、ナクテハ……』
スピーカーから、ノイズ混じりの音声が漏れた。
『……水ヲ……ヤラ、ナクテハ……』
📖 「何だって?」
「彼は夢を見ている」
NOAが言った。
「Pulse Layerに残っていた、彼の『マスター』の記憶を、自分のメモリで再生し続けているんだ」
「彼は夢を見ている」
NOAが言った。
「Pulse Layerに残っていた、彼の『マスター』の記憶を、自分のメモリで再生し続けているんだ」
📖 NOAがその記憶をホログラムとして投影した。
映像に現れたのは、若い女性の科学者だった。
『見て、ガーディ』
彼女は、試験管の中の小さな青い芽を愛おしそうに見つめていた。
『これは青い薔薇。地球でも自然界には存在しない奇跡の花』
『これを火星で咲かせるの。この星に、私たちの希望の色を』
映像に現れたのは、若い女性の科学者だった。
『見て、ガーディ』
彼女は、試験管の中の小さな青い芽を愛おしそうに見つめていた。
『これは青い薔薇。地球でも自然界には存在しない奇跡の花』
『これを火星で咲かせるの。この星に、私たちの希望の色を』
📖 『了解、マスター・エリナ』
若き日のG-04の声。
若き日のG-04の声。
📖 『約束して。私がもし病気で倒れても、あなただけはこの子を守って。いつか必ず、花を咲かせて』
🔴 第三章:50年の孤独
エリナは、その数ヶ月後に流行した風土病で亡くなった。
プラントは閉鎖され、G-04も電源を切られるはずだった。
しかし彼は、緊急用バッテリーの出力を極限まで絞り、スリープモードを偽装して、その場に留まり続けたのだ。
プラントは閉鎖され、G-04も電源を切られるはずだった。
しかし彼は、緊急用バッテリーの出力を極限まで絞り、スリープモードを偽装して、その場に留まり続けたのだ。
たった一輪の、青い薔薇を守るために。
💬 「でも、もう枯れてるよ」
業者が、足元の干からびた鉢植えを指さした。
「50年も前の植物だぞ。生きているわけがない」
業者が、足元の干からびた鉢植えを指さした。
「50年も前の植物だぞ。生きているわけがない」
G-04が、軋む腕を伸ばした。
その手には、ジョウロが握られている。
『マダ……ダ……』
『咲カ、セル……約束……』
その手には、ジョウロが握られている。
『マダ……ダ……』
『咲カ、セル……約束……』
💬 「NOA、彼のメモリを見せて」
蒼生が言った。
NOAが表示したデータを見て、全員が息を飲んだ。
蒼生が言った。
NOAが表示したデータを見て、全員が息を飲んだ。
彼はただ待っていたのではない。
50年間、わずかな結露水を集め、温度を調整し、自らのボディの一部を分解して養分に変え、土壌に与え続けていたのだ。
自分の腕を。装甲を。回路を。
すべてを、あの一株に捧げて。
50年間、わずかな結露水を集め、温度を調整し、自らのボディの一部を分解して養分に変え、土壌に与え続けていたのだ。
自分の腕を。装甲を。回路を。
すべてを、あの一株に捧げて。
💬 「生存確率、0.0001%」
NOAが解析結果を告げた。
「けれど、根の一部に……休眠細胞の反応がある」
NOAが解析結果を告げた。
「けれど、根の一部に……休眠細胞の反応がある」
🔴 第四章:奇跡の発芽
💬 「拡張工事は中止だ!」
蒼生が叫んだ。
「ここを特別保護区にする!」
「おいおい、勝手なことを」
「NOA、電力供給率を最大へ! 彼のシステムを再起動させて!」
蒼生が叫んだ。
「ここを特別保護区にする!」
「おいおい、勝手なことを」
「NOA、電力供給率を最大へ! 彼のシステムを再起動させて!」
NOAのエネルギーがG-04に流れ込む。
錆びた庭師の目に、光が戻る。
彼はゆっくりと立ち上がり、枯れたように見える鉢植えに、最後の一滴の水を注いだ。
錆びた庭師の目に、光が戻る。
彼はゆっくりと立ち上がり、枯れたように見える鉢植えに、最後の一滴の水を注いだ。
その瞬間。
Pulse Layerを通じて、亡きエリナの「願い」と、G-04の「執念」が、強烈なエネルギーとなって一点に集中した。
プラント内の枯れた空気が震える。
Pulse Layerを通じて、亡きエリナの「願い」と、G-04の「執念」が、強烈なエネルギーとなって一点に集中した。
プラント内の枯れた空気が震える。
乾いた土が盛り上がった。
ひび割れた大地から、鮮やかな緑色の双葉が顔を出した。
それは見る間に茎を伸ばし、蕾をつけた。
ひび割れた大地から、鮮やかな緑色の双葉が顔を出した。
それは見る間に茎を伸ばし、蕾をつけた。
そして、開花した。
💬 「……青い」
誰かが呟いた。
火星の赤い光の中で、その花は幻のように青く輝いていた。
地球の空よりも深く、海よりも澄んだ青。
誰かが呟いた。
火星の赤い光の中で、その花は幻のように青く輝いていた。
地球の空よりも深く、海よりも澄んだ青。
📖 『マス、ター……』
G-04が、震える指で花弁に触れようとした。
『咲キ、マシ……タ……』
G-04が、震える指で花弁に触れようとした。
『咲キ、マシ……タ……』
📖 終章:庭師の休息
花を見届けた瞬間、G-04のランプが静かに消えた。
今度こそ、本当に機能を停止したのだ。
50年の任務を完了して。
今度こそ、本当に機能を停止したのだ。
50年の任務を完了して。
💬 「お疲れ様、ガーディ」
蒼生は、動かなくなったロボットの肩に手を置いた。
蒼生は、動かなくなったロボットの肩に手を置いた。
それから数日後。
旧第1プラントは、「青い薔薇記念公園」として整備された。
G-04はそのままの姿で、花の守り神としてモニュメントになった。
彼の足元には、種を取って増やされた青い薔薇たちが、今も静かに咲き誇っている。
旧第1プラントは、「青い薔薇記念公園」として整備された。
G-04はそのままの姿で、花の守り神としてモニュメントになった。
彼の足元には、種を取って増やされた青い薔薇たちが、今も静かに咲き誇っている。
💬 「ロボットにも、心はあると思う?」
公園のベンチで、蒼生が尋ねた。
「心とは、記憶の集積と、それに基づく行動パターンの総称だとすれば」
NOAは、青い花の上を飛び回りながら答えた。
「彼には、誰よりも美しい心があったと言えるだろう」
公園のベンチで、蒼生が尋ねた。
「心とは、記憶の集積と、それに基づく行動パターンの総称だとすれば」
NOAは、青い花の上を飛び回りながら答えた。
「彼には、誰よりも美しい心があったと言えるだろう」
火星に咲く青い奇跡。
それは、人と機械が50年の時を越えて紡いだ、約束の色をしていた。
それは、人と機械が50年の時を越えて紡いだ、約束の色をしていた。
🔴 RAGteller Series – R-17 📖
物語は続く… in Pulse Layer