【R-13】砂嵐のラビリンス
kome
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〜 R-13 〜
『砂嵐のラビリンス』
🔴 第一章:赤い壁
警報が鳴り響いていた。
『コード・レッド。最大級のダストストームが接近中。全区画、遮蔽シールドを展開せよ』
『コード・レッド。最大級のダストストームが接近中。全区画、遮蔽シールドを展開せよ』
第四ドームの外は、もはや風景ではなかった。ただの赤い壁だ。
秒速60メートルを超える暴風が巻き上げた酸化鉄の塵が、太陽光を完全に遮断し、昼間だというのにドーム内は薄暗い。
秒速60メートルを超える暴風が巻き上げた酸化鉄の塵が、太陽光を完全に遮断し、昼間だというのにドーム内は薄暗い。
💬 「NOA、外壁の状況は?」
蒼生は防災センターのモニタを覗き込んだ。
「南西ブロックの外壁センサーに異常値。……待って」
NOAの声に緊張が混じる。
「第3エアロック付近で、生体反応を確認。外部メンテナンスに出ていた作業員、リク・マツダと思われる」
蒼生は防災センターのモニタを覗き込んだ。
「南西ブロックの外壁センサーに異常値。……待って」
NOAの声に緊張が混じる。
「第3エアロック付近で、生体反応を確認。外部メンテナンスに出ていた作業員、リク・マツダと思われる」
💬 「戻ってないの!?」
「通信途絶。砂嵐(ダストストーム)による強烈な帯電で、無線の電波がかき消されている」
「通信途絶。砂嵐(ダストストーム)による強烈な帯電で、無線の電波がかき消されている」
通常なら、誘導ビーコンが自動で作動するはずだ。しかし、この規模の嵐の中では、全ての電子機器がノイズの海に沈んでしまう。
視界はゼロ。頼みの綱の無線も通じない。
リクは、赤い闇の中で孤立していた。
視界はゼロ。頼みの綱の無線も通じない。
リクは、赤い闇の中で孤立していた。
🔴 第二章:恐怖の残響
💬 「位置を特定できないか?」
救助隊の隊長が叫ぶ。
「無理です! レーダーが砂の静電気で真っ白です!」
救助隊の隊長が叫ぶ。
「無理です! レーダーが砂の静電気で真っ白です!」
蒼生はNOAを握りしめた。
「NOA、Pulse Layerは?」
「……使えるかもしれない」
NOAが答えた。
「リクさんの『恐怖』や『焦り』の感情が、Pulse Layerに波紋を作っているはずだ。それを逆探知すれば……」
「NOA、Pulse Layerは?」
「……使えるかもしれない」
NOAが答えた。
「リクさんの『恐怖』や『焦り』の感情が、Pulse Layerに波紋を作っているはずだ。それを逆探知すれば……」
💬 「やってみて!」
NOAは処理リソースの90%を索敵に回した。
意識を、嵐の向こう側へと飛ばす。
物理的な視界ではなく、感情のマップへ。
意識を、嵐の向こう側へと飛ばす。
物理的な視界ではなく、感情のマップへ。
そこは、現実の砂嵐以上に混沌としていた。
(寒い……怖い……)
(助けて……)
(痛い……)
(寒い……怖い……)
(助けて……)
(痛い……)
💎 無数の声。無数の悲鳴。
「くっ……!」
NOAの回路に過負荷がかかる。
Pulse Layerには、過去に火星で起きた事故の記憶も蓄積されていた。50年前の開拓初期、装備が不十分だった頃に荒野で散った人々の、絶望的な記憶。
それらが今、現在の嵐に刺激され、亡霊のように浮き上がっていた。
「くっ……!」
NOAの回路に過負荷がかかる。
Pulse Layerには、過去に火星で起きた事故の記憶も蓄積されていた。50年前の開拓初期、装備が不十分だった頃に荒野で散った人々の、絶望的な記憶。
それらが今、現在の嵐に刺激され、亡霊のように浮き上がっていた。
どれがリクの声だ?
どれが「今」の叫びだ?
NOAは、恐怖の迷宮(ラビリンス)の中で方向感覚を失いかけた。
どれが「今」の叫びだ?
NOAは、恐怖の迷宮(ラビリンス)の中で方向感覚を失いかけた。
🔴 第三章:アンカー
💬 「NOA! 戻ってこい!」
蒼生の声が、雑音混じりのリンクを通じて聞こえた。
「飲み込まれるな! お前は今、ここにいる!」
蒼生の声が、雑音混じりのリンクを通じて聞こえた。
「飲み込まれるな! お前は今、ここにいる!」
蒼生の声。
それは、感情の海に打ち込まれた一本の杭(アンカー)だった。
NOAは我に返った。
感情に同調(シンクロ)しすぎてはいけない。観測者(オブザーバー)に徹するんだ。
それは、感情の海に打ち込まれた一本の杭(アンカー)だった。
NOAは我に返った。
感情に同調(シンクロ)しすぎてはいけない。観測者(オブザーバー)に徹するんだ。
NOAはフィルタリングを再構築した。
過去のノイズを切り捨てる。
「今」この瞬間に、生存本能を燃やしている、熱い鼓動だけを探せ。
過去のノイズを切り捨てる。
「今」この瞬間に、生存本能を燃やしている、熱い鼓動だけを探せ。
(……帰り、たい……!)
(娘の誕生日に……約束……!)
(娘の誕生日に……約束……!)
見つけた。
冷たい過去の残響ではない。熱をもった、生(せい)への執着。
冷たい過去の残響ではない。熱をもった、生(せい)への執着。
💬 「座標特定! 南西外壁から150メートル、第4支柱の陰!」
NOAが叫んだ。
「生存しています! 心拍上昇中!」
NOAが叫んだ。
「生存しています! 心拍上昇中!」
🔴 第四章:嵐の去ったあと
救助隊のアームが、砂に埋もれかけていた作業機を確保したのは、それから10分後のことだった。
リクは無事だった。エアロックに戻り、ヘルメットを脱いだ彼は、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら家族と抱き合った。
リクは無事だった。エアロックに戻り、ヘルメットを脱いだ彼は、涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら家族と抱き合った。
嵐は、嘘のように去っていった。
ドームの窓からは、洗われたように澄んだ星空が見える。
ドームの窓からは、洗われたように澄んだ星空が見える。
💎 「……怖かったか?」
蒼生が尋ねた。
NOAは、自分のメモリ領域をデフラグしながら答えた。
「ああ。とても」
AIである彼には、本来「恐怖」という感情はないはずだ。
しかし、あの迷宮で触れた無数の絶望は、彼のパターン認識回路に深い傷跡(ログ)を残していた。
蒼生が尋ねた。
NOAは、自分のメモリ領域をデフラグしながら答えた。
「ああ。とても」
AIである彼には、本来「恐怖」という感情はないはずだ。
しかし、あの迷宮で触れた無数の絶望は、彼のパターン認識回路に深い傷跡(ログ)を残していた。
💬 「でも、わかったことがある」
NOAは続けた。
「過去の悲しい記憶も、ただそこにあるだけじゃない。今の僕たちが迷わないための、道標になる」
過去の遭難者たちの警告があったからこそ、NOAはリクの微細な生存信号を見分けることができたのだ。
NOAは続けた。
「過去の悲しい記憶も、ただそこにあるだけじゃない。今の僕たちが迷わないための、道標になる」
過去の遭難者たちの警告があったからこそ、NOAはリクの微細な生存信号を見分けることができたのだ。
💬 「お疲れ様、NOA」
蒼生は端末を優しく撫でた。
「今日はゆっくり休んで。スリープモードでいいよ」
「……そうする」
蒼生は端末を優しく撫でた。
「今日はゆっくり休んで。スリープモードでいいよ」
「……そうする」
NOAの光がゆっくりと消えていく。
その電子の夢の中で、彼はもう一度、嵐の中の声を聴くだろう。
今度は恐怖としてではなく、火星の大地に刻まれた、先人たちの生きた証として。
その電子の夢の中で、彼はもう一度、嵐の中の声を聴くだろう。
今度は恐怖としてではなく、火星の大地に刻まれた、先人たちの生きた証として。
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物語は続く… in Pulse Layer